沈黙だから果たせること


話せるのに敢てしない行為、沈黙。
それ以上の現状維持を拒絶する時にも使うけれど、
言いたくても声が出ない、最上級の賛辞でもよくこの現象は起きます。
静的ではなく、大きな動作をするためのパワーが詰め込まれているように思います。


黙秘のように心が逃げるわけでもない。
黙認のように目をつぶって通してしまうわけでもない。
これらは『これ以上動きたくない』という意思表示。


本当に溢れる強い思いも、言葉にすると軽くて陳腐になってしまいます。
だからといって言葉できちんと伝えないと伝わらない場合もあります。
空気や雰囲気を汲み取って読めというところでしょうが……。
この価値観が人それぞれ、マチマチだったりするからややこしいところです。


幸福色の沈黙を漂わせられるようになったら、大人の仲間入りだろうか?
足跡も気配も透き通らせるほどの沈黙が生み出せるようになったら、誰も傷つけなくなるのかな?


目で見える文章の白紙の部分も沈黙。
文字と文字、行と行の間。
二次元の文字の世界に色彩をもたらし、音を生み出す。


その瞬間の音のない世界が全体の雰囲気の良し悪しを決定付けてしまう沈黙。
間や息継ぎのタイミング。
会話にしても、楽器などの演奏にしても聞かせるための音より、聞こえないこの無音な世界の良し悪しがものをいう。


素はシンプルなのに、無駄に飾りすぎているから疲れてしまうのかなぁ。
それとも沈黙を効果的にあしらうことが難しいのかな?


マシンガンのように繰り出される言葉や音が、ただ砂のようにすり抜け通りすぎてしまうなら、
大事な1言を伝えるために、その他は全部削ぎとって掴み取れるようにするのが理想の形なのかもしれない。
沈黙は大事な1言を手にするために用意された、集中の時間。