予期しない反力


性別に限らず、私にまつわる外的要因のフィルターを通した時点で、
もうあなたには私が見えない。
そこに私はいない。
あなたが勝手に作り出した妄想の登場人物に過ぎない。




私の思考は、私自身の経験や体験などから得た引き出しの中から引っ張り出される。
そのデータ達の切れ端をミックスして再構築したり、
遠心分離機にかけてそぎ落とすことによりできあがる。
同じ事象でも、その時の気候や体調または気分で、果てしない化学変化を起こすこともある。


文字だけの表現だから、誤解や誤読が生じやすいという人がいるかもしれない。
表情が見えれば、相手の気持ちがわかるのか?
声で伝えられれば、正確に理解できるのか?


実際には、書き手の意図した世界を感じることも察することもできない。
なぜなら書いたその人ではないのだから。
読み手の身勝手な思い込みで進められる。
読み手の経験から似ている現象を引っ張り出し、かき集めなんとか当てはめてみる。
それを共感していると浸るのが精一杯ではないのか。


こうして文字で発信した想いを、実物の書き手とシンクロされるのか。
書き手がある程度読み手に想像をしやすいデータを与えたとすれば、距離が縮められるかもしれない。
書き手が望む人物像を、敢えて読み手に刷り込んだらどうだろう。
たとえば生い立ちや住まい、家族編成。
性別や血液型。身長やもろもろの外見を司るリアルなデータ。
自画像イラストや実物像の写真。
これらを公開すれば、読み手に書き手がわかりやすいかもしれない。


しかし外枠が認識できたとして、内面の構造まではどのように伝えるのだろう。
今の気持ちをこと細かく詳細に示しても、
それでも書き手は、自分に都合の悪いことそれが長所であれ短所であれ、無意識に隠してしまうかもしれない。
意思とは逆に自分自身の本質から遠ざかるかもしれない。
心のどこかで、人に見られるからだけではなく、自分自身にさえ本質を見えないフリをするかもしれない。


時間は流れて進んでいるし、細胞も生まれては消えていく。
書き記した文字は、ここで気持ちを時間と気持ちごとこの場に留めて置いてくれるけれど、
文字をこうして綴っているそばからも、気持ちはどんどん進んでいく。
目で見て体で認識したものは、書き留めた瞬間からまた増減し、変化する。


所詮私程度の人格形成で、書き手本人が持つ本質を読み手にリードすることなど難しすぎる。
そのくせふとした単語に、本質の私が現れてしまうことがある。
ここで書いている文字1つ、単語1つ。
数ある中からその文字や単語を選んだ私の心の機微が、こんなにたくさん表れている。
一見でわかる像よりも、ずっと本質に近い私が曝け出されいるように思う。


記事として、架空の世界としての書き手と現実の本人とは別人か。
ブログを通してネットの中のコミュニケーションを選ぶ。
書き手の自分から、読み手の自分へのメッセージの場を求めているだけなのかもしれない。
書き手にとって、答えに決まりがあって唯一無二であったとしても、多様の読み手にとっては十人十色。
縛ることも規制することも難しい。
この場所には、確実な鍵など存在しない。




ブログ上で『意図しないリアクション』にショックを受けたという話を聞いて、ここまで考えを綴ってみた。
私が『意図しないリアクション』を受けたらどうだろうかといろいろ考えてみた。
エッチなコメントとか、馬鹿ばかバカとむやみやたらに連呼されるとか。絶対に踏まれたくない心の地雷を踏まれるとか。
まだ、このような状態の経験がなくて想像にいたらなかった。
ボーっとしているうちにすべてが洗われて、わからなくなっているだけなのかな。


でももし書き手が仮想の人格をネット上で提示しているのであれば、
読み手に対して現実の人格として迫ってこないで欲しい願うのは難しいと思う。
ましてや同じリアクションでも、許される人と許されない人が存在するとなると、なおさら話がこじれてしまう。


仮想の世界で仮想の人格。
仮想の相手が仮想の自分に示した行動に、現実の自分が傷を負うからやめて欲しいと訴える。
その願いは誰に対してなのだろう。
空気の読めない仮想の相手なのか?
仮想と言いつつ現実の自分ですべてを受け止めまくっている自分なのか?
仮想の自分を現実の自分と切り離せないでいるのは、実は自分自身なのではないのか?


ちなみにここに現れる私は、意図して作っていないつもり。
頭に浮かんだことを身づくろいや化粧をなるべくしないで、スッピン仕様。
自己防衛本能は強いほうだけれど、鉄壁な守りができるほどおりこうさんじゃない。
どっちかというとズタズタで、色んな物をダラダラ流しながら肩で息をしている。
ギリギリだよとぼやきながら、目に入ったもの手当たりしだいに突進している。
だけどどんなに色んな物を流しても、この記事は一色には塗りつぶされないないんだよ、きっと。